書こう、あの熱さ、冷たさを。甘く苦い過ぎ去った日。伝えよう夢。77ch
バスの話を書いていた。巨人軍は不滅だと、ミスターが言い残して引退した頃の事。僕は新宿のビジネスホテルに連泊して、かなり焦っていた。とある劇場に揚げるはずの戯曲が全く出来ていなくて、仲間にも言い訳が立たない窮地にあった。何でそんな事を思い出したんだろう。いい加減な本を何本も書いては公演に漕ぎ付けていたのに、その時は書けなかった。初めての事だった。そして公演は中止。後始末が大変だった。あの話はどんな話にしようとしたのだろう。きっかけは何だったんだろう、登場人物は?
今、あの時の宙ぶらりんな思いを拾い集めている。重大な見落としがそこにあったような、そんな気がして。あちこちの断片が異様に青く輝きだしては、主張するんだ。在るべきところに納めろと。そんなこんなで、僕はまた、書き始めようと思う。あてもなく。朽ち果てる前に。
夏、九十九里での合宿。ビアガーデンでのバカ騒ぎ。うぶすぎる恋愛遊びに興じては、ヌーベルバークの作家たちを投影していた優しく幸せな時間。言葉が翔ける。世界を手に入れろと。
ラ・ボエームのように、ノスタルジーが体に覆いかぶさってくる。一瞬、彼女がトマトを僕の背に投げ入れたのかと思った。冷たいトマトを取り出そうともがく。彼女は喜んでいる。どうしているんだろう今頃。ヌードモデルをしていた、名前も知らない娘。僕は彼女の好意にあいまいに微笑んでいた。
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